新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が、大関復帰を目指す関脇琴奨菊(33=佐渡ケ嶽)を突き落としで下して、初日からの連勝を9に伸ばした。

 立ち合いで頭から当たったが「それ以上に相手が出てきた感じがする。ギリギリのところだった」と土俵際まで押し込まれた。それでも、落ち着いているのが今場所の新横綱。冷静に左からの突き落としを見舞うと、自身は体をひらりと、軽やかに踊るように土俵に残った。

 幕内最多を更新する63度目の対戦となった宿敵とは先場所まで、同じ大関としてしのぎを削ってきた。だが、今場所は自らが横綱に昇進し、相手は関脇へと陥落。番付に差がついた。

 それでも、心境は変わることのない相手。いや、それ以上に警戒心を持っていた。場所前の連合稽古でしのぎを削った際「琴奨菊がだいぶ仕上がっている。すごかった。あれだけの圧力を食らうと、ここが違うんだなとか、ここがダメだとか分かる。土俵の中で修正できたし、番数以上に、勝ち数以上に得たモノがあった」。気づかせてくれた相手だからこそ、最大限に警戒し、全力で仕留めた。

 初優勝した初場所で、ただ1人敗れた相手に雪辱し、弟弟子の高安(27=田子ノ浦)とともにトップを並走する。気持ちの波もなく「いいんじゃない」とひと言、つぶやいた。