大関照ノ富士(25=伊勢ケ浜)が前頭筆頭の勢を下し、自身4度目のかど番から脱出した。これまで8戦1勝と合口の悪かった相手を圧倒。9日目のかど番脱出は自己最速となった。平幕栃煌山とともに1敗を守り、15年夏場所以来2度目の優勝へ向けて、全勝の横綱稀勢の里と関脇高安を追いかける。

 照ノ富士に本来の勢いが戻ってきた。勢の左前みつを引いて深く上手を取り、投げは決まらなかったが、体を寄せて寄り切った。相性の悪い相手に完勝してのかど番脱出に「普通」と言ったが、笑みがこぼれた。

 今場所はいい刺激があった。付け人の駿馬が幕下に初昇進。35歳2カ月の最年長記録だった。照ノ富士が11年に間垣部屋に入門した時、兄弟子として指導を受けてきた。13年の部屋閉鎖に伴い現在の部屋に一緒に転籍し「頼りになります」と話す恩人。照ノ富士は「十両上がったら車買ってあげますよ」と大盤振る舞いかと思いきや「40万円のね」と照れ隠し。実際は場所前に祝い事を考えていたが「普段からお世話になっていますから。気持ちだけでも本当にありがたい」と駿馬から遠慮されていた。

 自己最速9日目でのかど番脱出。自身よりも3センチ身長が大きい195センチの勢を「土俵に上がったら自分より小さく見えた。小さく見えてきたら勝っちゃうよね」と調子の良さをアピール。駿馬は「取りあえず良かったです」と安心した。縁の下の力持ちに支えられながら、15年夏場所以来の優勝へ、ひた走る。【佐々木隆史】