大関照ノ富士(25=伊勢ケ浜)が1敗を守り、単独首位に立った。大関復帰を目指す関脇琴奨菊(33=佐渡ケ嶽)をはたき込みで下し優勝次点だった15年春場所に並ぶ自己最多の13勝目を挙げた。15年夏場所以来2度目の優勝をかけ、今日26日の千秋楽で2敗の稀勢の里との直接対決に臨む。

 異様な雰囲気が会場を包んだ。大関復帰まで1敗も許されない琴奨菊相手に、照ノ富士は立ち合いで右に変化した。前のめりになった相手の頭を右手で押してはたき込み、わずか0秒6で決着。「お前なんか応援しねーぞ」「そこまでして勝ちたいんか」「2度と横綱目指すなんて言うな」。まさかの展開にブーイングが飛び交った。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「良くない」と苦言を呈した。

 誰も予想していなかった立ち合いの変化。「上がってから」と土俵の上で決めていた。1度立ち合いが合わなかったが「1度決めちゃったから」と気持ちは変わらなかった。だが、予兆はあった。初顔合わせとなった14年秋場所で、照ノ富士が右に変化してはたき込んで白星。15年夏場所の千秋楽では、今度は琴奨菊が左に動いてはたき込んで勝ち越しを決めた。ここ一番で互いに注文相撲を選ぶ因縁があった。

 今場所初めて昨年初場所を途中休場して手術した左膝のテーピングの上からサポーターを着けた。「大丈夫です」とあっけらかんと話すが、ダメージは確実に蓄積されている。この日の朝稽古は四股を数回踏んで終わり、足を引きずりながら引き揚げ、病院に向かった。場所中盤から「痛いのを我慢してる」と漏らしていた左膝で、立ち合いで踏み込むのは厳しかった。

 15年夏場所以来2度目の優勝をかけて今日26日の千秋楽で稀勢の里と直接対決する。「自分もケガして苦しいとき、ちょっとずつ良くなってきた。良くなってほしい」と回復を願ったが、土俵の上では関係ない。「全力でやるだけです」。真っ向勝負を挑む。【佐々木隆史】

 八角理事長(元横綱北勝海)のコメント (照ノ富士には)真っすぐ行ってほしかった。勝ちたい気持ちは分かるけど大関だからね。残念は残念。お客さんもいい相撲を見て満足してくれる。その見せるという認識がね。