関脇高安(27=田子ノ浦)が、大関取りへの強力な足固めになる12勝目を挙げた。関脇玉鷲を寄り切り、3度目の殊勲賞を獲得。初場所の11勝を加えると、大関昇進の目安となる「三役で直近3場所33勝」へ、あと10勝。夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)での悲願成就に近づいた。

 涙が止まらなかった。取組を終え、西の支度部屋で高安がむせび泣いた。目の前のテレビに映っていたのは、痛みに耐え奇跡の逆転優勝を遂げた兄弟子の姿。誰よりも近くで、その苦闘を見てきた。「すごいのひと言です。報われて良かった…」。目を真っ赤にしてこぼした。初場所に続いて稀勢の里の優勝を目の当たりにして「本当に感動しました。もう1回、いい景色を見させてもらった。ありがたいです」。声を震わせ、言葉を絞り出した。

 本割を前にした兄弟子へ、勇気を与える白星だった。稀勢の里が土俵下で見守る中、前に前に攻めて玉鷲を撃破した。「勝って終われて良かった」。来場所後に大関の座をつかむためには、この日の結果が重要になることも十分に分かっていた。

 初日から10連勝も11日目から3連敗。だが、終盤の連勝で白星を上積みした。昨年秋場所では10勝しながら最後に3連敗し、翌九州での昇進失敗につながった。「今場所もズルズルいったら今までと変わらないから、絶対に止めたい気持ちがあった」。強い覚悟で盛り返し、精神的な成長を示した。大きな感動をもらった兄弟子へ、夏場所では高安が大関昇進で恩返しする。【木村有三】