大相撲の春巡業は9日、静岡市で行われ、横綱が新十両に相撲の厳しさを教えた。

 土俵に上がった日馬富士(32=伊勢ケ浜)がぶつかり稽古で指名したのは、春場所で新十両ながら10勝5敗と優勝決定戦まで歩を進めた朝乃山(23=高砂)だった。ざんばら髪の有望力士に胸を出す。押し方も指導する。始めは順調だった。

 しかし、すぐに体力がなくなり、あまりにも休みがちになってきた期待の若手。転がされた後で一向に起き上がれない姿に、周囲の力士や土俵下の親方からも厳しい声が飛んだ。日馬富士も決してやめず、あらん限りの力を出させた。結局、ぶつかり稽古は20分間にも及んだ。

 日馬富士は「良い思い出になって、強くなってくれれば」としたが、20分間と聞くと「半分くらいは休んでいたんじゃないか。ついつい、昔の自分や白鵬関、稀勢の里とかと比べちゃう。おれたちは横綱に胸を出してもらったら、命懸けで必死だった。休んでいる場合じゃなかった。自分たちが上がったころは、すごく厳しかったからね」と述懐。そして「(朝乃山が)横綱、大関になったら胸を出して、相撲道を受け継ぎ、相撲界を支えてほしい。その思いだけです。顔を張られて強くなるのが相撲道だから。遊びじゃない。厳しい稽古をしてほしい」と注文をつけた。

 入門からまだ1年の朝乃山は「僕もダラダラしていた。最後はふらふらやった。いい経験ができました」と話すのがやっとだった。