不運と言うべきか、それとも相撲の神さまのいたずらなのか。

 横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が西前頭筆頭の遠藤(26=追手風)に押し出されて、横綱昇進後、初めて金星を配給した。

 立ち合いは突き、押しの応酬。押し込むだけの力は見られなかった。強烈な右の張り手を見舞った瞬間、遠藤の右足が下がり、そして滑った。ガクッと下がる相手の体。すると稀勢の里の体が一瞬、止まった。間があった。そして、体が思わずはたき込みにいってしまった。これがまともに呼び込む形となって、あえなく押し出されてしまった。

 悔しさのあまり、支度部屋でほとんど口を開かなかった稀勢の里に代わり、八角理事長(元横綱北勝海)は「(遠藤の)頭が下に行っちゃったから、つい頭を押さえにいったんじゃないか。負けた気がしないだろう。『何やってんだ、オレは』という感じでは」と心情を推察した。

 平幕力士11人目で許した初金星。何より、3連覇に挑む優勝争いから後退する2敗目。左上腕付近のけがを抱える稀勢の里にとって、試練の場所になっている。