陥落した幕下で4場所目を迎え、ここまで2連敗を喫している東幕下19枚目の豊ノ島(33=時津風)が、3番相撲で西幕下19枚目の虎太郎(こたろう、21=藤島)と対戦。押し出しで敗れ、今場所初白星はお預けとなった。

 押し合いとなった主導権争いで、相手のいなしに体が泳ぎかけたが立て直し、再び土俵中央での攻防となったが、圧力に押されつい引いてしまった。これが相手を呼び込む形となり、土俵下まで吹っ飛ばされた。

 「はたいたのが良くなかった。引いてしまった。そこがダメ。(左差し狙いも)相手はみんな自分の左を封印してくる」と根負けしたような相撲を悔やんだ。

 そんな豊ノ島に、目からうろこが落ちるような“神の声”が送られた。汗を流す風呂場にこの日も、昨年九州場所を最後に引退した(最終番付は今年初場所の西幕下6枚目)荒磯親方(34=元前頭玉飛鳥)が駆けつけた。「受けて勝ってやろう、という相撲に見える。悩ましい苦しい気持ちは分かるけど、力を出し切っていないように見える。せっかく、やろうという気持ちで臨んでいるんだから」。そんなニュアンスの言葉をかけてくれた。

 豊ノ島によれば、やはり幕内から幕下まで落ちながら2度、関取復帰を果たした荒磯親方は、昨年九州場所から幕下で相撲を取り続ける豊ノ島に、取組を終えるたびに勝敗に関係なく、風呂場に来て声を懸けてくれるという。「自分でも変なプライドから受けて立っていた。今日の攻め方も相手を見ながらだった。どうせ負けるなら、突き落とされて豪快にこける方が気持ちいい。言われてそう思いますね。もっと若い時の気持ちで」。依然として白星はないが、目を覚まされるような言葉を胸に、豊ノ島は相撲を取り続ける。