「大関高安」が今日31日に正式に誕生する。大相撲名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)の番付編成会議と臨時理事会を経て、都内で大関昇進伝達式が行われる。晴れの日を翌日に控えた30日、高安(27=田子ノ浦)は東京・江戸川区の部屋で取材に応じ、覚悟を込めた口上を述べることを明かした。

 高安に迷いはなかった。昇進伝達式で述べる口上を、既に決めていた。「自分が思っていることをストレートに言いたい。これからの覚悟や気持ちを込めて、伝えたいと思います」。

 何も参考にはしなかった。兄弟子稀勢の里と、先代師匠の隆の里の伝達式だけは映像で見た。ただ、相談は誰にもしていない。「自分で言う言葉だから、自分で考えた。一生残る言葉ですから」。四字熟語を入れるかどうかは「まあ、楽しみにしてください。どちらかといえばシンプルかな」と笑ってけむに巻いた。

 伝達式に臨む心境を「ワクワクの気持ちの方が強い。楽しみです」と言った。稀勢の里が大関昇進で臨んだのは11年11月。平幕だった当時は「『すごい』のひと言。次はオレだ、という気持ちはなかった」。それは偽らざる心境だった。

 入門当初は、土俵に気持ちがなかった。転機となったのは06年。父栄二さんが腎臓がんを患い、腎臓を1つ摘出する大手術を受けた。経営していた飲食店も手放した。「父親が望むことは相撲で大成すること。そういう状況で『頑張れ』と言われてすごく身に染みた。ウカウカしていられない。結果を出して喜んでもらいたいという気持ちが強かった。土俵に足がつくようになって番付も上がった」。

 それでも、大関は夢のまた夢だった。その夢がかなう。両親への恩返しにもなる晴れ舞台。「夢のような時間になると思う」と胸を高鳴らせた。【今村健人】