新関脇御嶽海(24=出羽海)が、大記録目前の横綱白鵬を止めた。右上手を離さずに、寄り切り。今場所2人目の横綱撃破で、勝ち越しを決めた。初黒星の白鵬は、元大関魁皇と並ぶ歴代最多の通算1047勝が持ち越しとなった。

 頭上を飛び交う無数の座布団に、御嶽海は酔いしれた。「久々だなぁ」。大記録達成の瞬間を待ち望む空気が一変。押し相撲の力士が白鵬を寄り切った。まさに番狂わせ。観客は狂喜乱舞した。その表れの座布団に「今までで一番多く舞ったんじゃないですか」。そう、それだけのことをしてみせた。「いや~、うれしい。今までで一番うれしい」と何度も顔が緩んだ。

 初めて対戦した1年前の名古屋場所の経験が生きた。当時は左ほおを張られて、予想と違う左四つで一気に寄り切られた。

 今回もまた右張り手が飛んできて左四つになった。「自分の右に変化すれば右を差して持っていこうと思っていた。でも、張られた瞬間、状況が全部変わった」。一瞬の戸惑い。だが、瞬時に1年前が頭をよぎった。同じ-。ためらわずに右上手を握った。「止まらずに出ないと勝てない」。

 体が動いた。出し投げを打って体が入れ替わると、ひたむきに前へ出た。外掛けを食らおうとも、命綱の上手は離さなかった。4横綱の中で1人、土俵上での勝ちがなかった白鵬を倒して勝ち越した。「また1つ自信になった」と喜んだ。