関取最年長の東十両2枚目安美錦(38=伊勢ケ浜)が、同14枚目大成道を下して勝ち越しを決め、九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)での再入幕に大きく前進した。10月3日には39度目の誕生日を迎え、幕内返り咲きとなれば、昭和以降最年長記録。トップタイで先頭を走る優勝争いを制すれば、戦後最年長の十両優勝となる。前日に引退疑惑をかけられたが、まだまだ現役で突っ走る。

 安美錦が4場所連続の勝ち越しを決めた。7勝同士の対戦となった相手は、新十両の大成道。勢いに乗っている24歳だが「あんまり考えてもしょうがない」と正面からぶつかった。距離を取られたが、頭を下げて低い姿勢を保ちながら食らいつき、土俵際で体を開いて突き落とした。「若いのに負けないように、盛り上げていこうと思った」というベテラン魂。昨年名古屋場所以来となる幕内に返り咲けば、昭和以降の最年長記録になる。最年長十両優勝も視野に入ってきたが「その時の状況だからね。残り3日間全力でやるだけ」と意識はしなかった。

 前日20日に、周囲から引退疑惑をかけられていた。携帯でネットニュースを見ていると「アム…アミ…俺?」と驚いた。知人からも「引退するの?」と連絡があったという。実は、歌手安室奈美恵(40)が、来年で引退すると発表したニュースを見てのこと。安室の名前には、しこ名と同じ「安」と「美」が入っていて、それが勘違いを招いた。騒ぐ周囲だったが「まだまだやるよ」と笑った。昨年夏場所での左アキレスけん断裂からの復活を狙う38歳が、アラフォーの底力を見せる。【佐々木隆史】