横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が、逆転優勝へ望みをつないだ。1差で追いかける大関豪栄道が勝ったため、負ければ優勝を譲ってしまう結びの一番で関脇御嶽海を下した。並走していた平幕の朝乃山が黒星を喫し、優勝は日馬富士と豪栄道に絞られた。春場所の稀勢の里以来11例目となる、千秋楽直接対決から1差逆転優勝へ向けて全身全霊で戦う。

 日馬富士は、落ち着いていた。負ければ豪栄道の優勝が決まる結びの一番。御嶽海にもろ差しを許したが「落ち着いてさばけた」と外四つに組み、まわしを引きつけて寄り切った。千秋楽までもつれ込ませた優勝争い。「自分の相撲に集中して」と、自らに言い聞かせるように同じ言葉を繰り返した。

 誰がこの展開を予想しただろうか。今場所の4敗は全て金星配給。1場所で4個金星配給して、優勝した横綱は過去に1人もいない。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も3個目の金星を配給した翌6日目の朝、優勝争いについて「そこらへんは考えていない。どうしても左腕が使えないから。やれることをやるだけ」と、千秋楽まで土俵に上がり続けることだけを願った。しかし、気が付けば優勝争いをしている。「勝負事は予想できない」と日馬富士だけは、最後の最後まで諦めていなかった。

 千秋楽直接対決から1差逆転優勝は、過去に10度ある。日に日に高まる1人横綱への期待にも気負わない。「明日も一番残っているので、しっかりと務める。務めるというのは土俵に上がり続けることですよ」。今場所は何度も、土俵に上がり続ける大切さを口にしてきた。そして上がり続けた結果、最高の舞台が整った。16年名古屋場所以来9度目の賜杯は、手が届くところにある。【佐々木隆史】