東十両2枚目の安美錦(38=伊勢ケ浜)が、惜しくも戦後最年長十両優勝を逃した。

 本割で天風を上手出し投げで下して10勝目を挙げて、同部屋の誉富士や阿炎ら4人によるトーナメント形式の優勝決定戦に持ち込んだ。だが、1回戦で琴勇輝と対戦すると、立ち合いの不成立が2度。その中で左頬を張られる場面もあった。3度目の立ち合いでは左に変わったが、あえなく突き出された。

 支度部屋に戻った関取最年長力士は、珍しく怒り心頭だった。「あんなんじゃ、やる気がなくなるよ。手をつけってんだよ。こっちが気を使って手を合わせないといけない。(直前に決定戦があった)三段目の相撲を見習ってほしいよね。何十年ぶりに決定戦に来て、優勝どうのこうのより楽しんでいたのに、味わう前に台なしだよ。あんな立ち合い、するつもりじゃなかったのに」と腹の虫が治まらない様子だった。

 本割に全てを懸け、決定戦では「体がもう、言うことを聞かない。足は動かないし、気持ちで取るしかなかった」という。それだけに、決定戦1回戦の相手を決めるくじ引きでは「誉富士と当たれ!と思っていた。どうせなら誉富士とやってみたい。燃え尽きるつもりでやろうと『当たれ、当たれ』と思ってやっていた」と、願いながらくじを開いたが、祈りは届かなかった。

 初めて番付にしこ名が載った97年春場所の序ノ口以来、20年半ぶり2度目の決定戦も、当時と同じく優勝はできず。「相変わらず、負けた。優勝できないんだね」と苦笑いだったが、11月の九州場所では昭和以降最高齢の再入幕が確実。10勝に上積みできたことで番付も上がる。「まぁ、本割に集中できたから」と最後はなんとか留飲を下げていた。