立ち合いから圧倒した。2本差して、前に、前に。最後は貴ノ岩を押し出して、気迫の表情。

 東前頭3枚目の阿武咲(21=阿武松)が記念すべき10勝目を挙げた。「最後にいい勝ち方で終われて良かった。しっかり当たって、反応できた」と自画自賛した。

 今年夏場所の新入幕から3場所続けての2桁白星。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、初めての快挙だった。過去に挑んだ初代横綱若乃花ら6人は、いずれも撃沈。3場所目で勝ち越した力士すら、白鵬ただ1人だった。ただ、そんな歴史を塗り替える白星にも「うれしいけど、そんなに意識はない。あくまで結果なので。土俵の上で思い出しました。『そういえば』と」。“結果”については務めて冷静だった。

 初めての上位戦となった今場所。1横綱1大関に加えて2関脇と1小結も倒した。2度目の敢闘賞も受賞した。「素直にうれしいです。全体的に落ち着いていた。内容よりも、強い人とやれてうれしかった。上位の独特な緊張感があったし、これからに生きる大事な場所になった」と振り返った。

 次の九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)は、新三役が濃厚。だが、それにも「番付は関係ない。強くなることだけが目標なので、強くなることを追求していく」と意に介さない。頼もしい若手が台頭した。