日本相撲協会は30日、大相撲九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)の新番付を発表した。「39歳0カ月」の大ベテラン安美錦(伊勢ケ浜)が、元関脇土佐ノ海(現立川親方)の「38歳6カ月」を抜き、昭和以降で最年長の再入幕を果たした。宿舎のある福岡・太宰府市の太宰府天満宮で会見に臨んだ安美錦は「記録はたまたまだけど、戻ってこられたのはすごくうれしい。いい弾みになります」と相好を崩した。

 自分の前に会見した先場所優勝の横綱日馬富士から写真撮影で「一緒に撮りましょうよ」と声を掛けられて「顔じゃないよ」と1度は尻込みした。横に座ると「目を開けてますか…あ、開いてるか」と細い目をいじられた。「会見なんて、もう引退会見しかないと思ってたからさ」と照れ笑いに喜びがにじんだ。

 昨年夏場所の左アキレスけん断裂からはい上がった。先場所は2桁勝利を挙げ、昨年名古屋場所以来8場所ぶりの幕内に返り咲いた。「長かったような、短かったような中身の濃い1年半。手探りでいろんな人に(治療法を)聞いて、体を実験台にしていろいろ試してきたから」。最もつらかったのは土俵復帰後だ。自分の相撲が取れない。「すごく悩んだ」。折れかけた心を支えてくれたのは、ファン、関係者、そして家族だった。

 妻絵莉さんがいる。「行動で示してくれた。僕が頑張る状態を作ってくれた。夫婦だから(何も)言わなくてもわかるから」。2人の娘がいる。「相撲がだいぶわかってきてね。勝つと喜ぶし、負けると僕以上に落ち込むんです」。7月6日に生まれた長男がいる。「下の子が相撲をわかるまでは…そしたら、何歳になっちゃうんだろう」。

 数々のけがを乗り越え、通算3度目の再入幕は西前頭13枚目から始まる。横綱、上位陣と対戦するために、まだまだ頑張りたい。「今場所しっかり勝ち越す。簡単に(十両に)落ちないようにね」という声に、力がこもった。