関脇嘉風(35=尾車)が、全勝の白鵬(32=宮城野)を止めた。15年秋場所以来2度目(15敗)の白星。NHKのインタビューから引き揚げてきた支度部屋では「最強横綱に勝ったのに、記者の方の人数が少ないなぁ」とおどけながら、喜びをかみしめた。

 立ち合いで、決して前に踏み込まなかった。その場で立ち上がるような、フワッとした立ち合い。それは一瞬のひらめきだった。両手をついて先に仕切ったときには、どう立ち合うか、まだ考えがまとまっていなかった。「横綱の正面にいようと思っていた。そうしたら、張ってくるのが見えた。真っすぐ来るなと。横綱は上手を取ってからの攻めがすごく速い。早く立とうと思わず、踏み込まないように。横綱に上手を取らせないように当たっていこうと思った」。

 それが、白鵬を“戸惑わせた”。呼吸が合わなかったと勘違いしたのか、力を抜いた横綱。「明らかに横綱は力を抜いていましたね。力を抜いたから待ったかと思ったら(行司が)『残った』と。これは行っていいんだと、出ました」。2本入った形で走って、寄り切り。白鵬を、土俵下まで転がり落とした。

 ただ、勝ち名乗りを受けるまでは「前代未聞」の間があった。白鵬が土俵に上がらない。「待った」を主張していた。時間にして1分。その間、じっと待っていた嘉風は「もう一丁になったら、絶対に勝ち目はない。それだけはやめてくれと思っていました。全部が良かったんです。全部良くないと、あの方には勝てないです」と喜びに浸っていた。