平幕の北勝富士(25=八角)が関脇嘉風を破り、自己最多の11勝目を挙げた。日体大の大先輩に対し、1度は中に入られ、下がりかけたが、前傾姿勢を崩さず押し返し、最後は右下手でまわしを取って寄り切った。「まわしを取ることは考えてなかった。最後は突き押しのままいきたかったけど、逆転の投げがあるから」と慎重を期した。

 2敗を守って、トップの白鵬とは1差のまま。直後の結びの一番で、その白鵬が宝富士に2度も背後をとられかける場面があった。勝ち残りの土俵下で「行け! と思った。そりゃ人間ですから」と笑い、それでも勝った横綱に「さすがです。普通の人じゃないですよ」と首をひねった。

 今場所は付け人4人全員が勝ち越した。関取になって9場所目で初の“快挙”だ。特に驚いたのは、東序ノ口16枚目北勝里が入門7年目、デビュー39場所目にして初めて勝ち越したことだ。「奇跡ですよ。なんかオリンピックよりすごい」。付け人に渡す“骨折り(小遣い)”は勝ち越したら“ボーナス付き”と決めている。「いつも、みんなに『何で勝ち越すんだよ』って言うんです。出費がかさむでしょ?」と言いつつも、うれしくてたまらない。

 部屋の兄弟子、隠岐の海も2敗を守った。「支度部屋に戻ってきた時に、すごい笑顔だった。“お先”みたいな」。ともに平幕優勝の可能性を残す終盤戦が楽しい。14日目は番付は小結と上だが、4つ年下の阿武咲戦。「あまり勝ってるイメージがない。十両で1回勝ったかな。いつもはたき落とされてるような」。幕下時代から通算1勝4敗。合い口は悪いが、ここまで来て星を落とすつもりはない。