千載一遇のチャンスだった。東前頭5枚目の宝富士(30=伊勢ケ浜)は2度、横綱白鵬(32=宮城野)を裏返しにさせた。だが…。「横綱が速いというより、自分が遅いんです」。2度とも反転を許し、最後ははたき込まれた。「空回りして、こけた。自分が最後、慌てました」と嘆いた。

 1度目に残された後、こん身の右上手出し投げを放った。「あれで決まるかなと思った。ほかの人なら決まっているはず」。だが、残された。だから、慌てたのもあった。「横綱は足腰が全然(強い)」。脱帽だった。

 勝てば勝ち越しだった。横綱を倒したとあれば、三賞の殊勲賞をもらえる可能性も浮上したはず。そして、この一番についた27本の懸賞も…。しめて約300万円が、夢へと消えた。付け人が持つぺったんこの巾着を「パンパンにふくらんでいたかもしれないのになぁ…」と、うらめしそうに見つめていた。