平幕貴ノ岩(27=貴乃花)は一体どこにいるのだろうか? 大相撲の元横綱日馬富士関(33)から暴行を受けた貴ノ岩は現在、行方や病状が不明で、日本相撲協会も接触、情報収集を試みながら実現していない。今年のスポーツ界を振り返る連載「取材ノートから」の最終回でも、今回の暴行問題を取り上げる。

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 181センチ、148キロの大男が見つからない。今や新聞やテレビ、週刊誌などがこぞって追いながらも、まるで姿を見せない貴ノ岩。だが問題が発覚した九州場所3日目の11月14日、実は目と鼻の先にいることを確認できていた。

 その前日の11月13日。同場所初日から休場しながら、遅れて公表された貴ノ岩の診断書は「1脳振とう、2左前頭部裂傷、3右外耳道炎、4右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」という痛々しい症状が並んでいた。

 翌14日、博多駅を午前4時45分に出発する始発電車で2時間以上かけて、田川市の部屋に向かった。貴乃花部屋の稽古は早ければ午前6時ごろに終わるが、その日は同7時半ごろまで行われた。この時点ですでに一部報道で暴行問題が発覚していたが、早朝から稽古していた部屋関係者は、そのことを知らなかった。

 貴乃花親方も貴ノ岩もいなかったが、部屋付きの音羽山親方(元前頭光法)のもと、幕内貴景勝、十両貴源治らが稽古していた。地元市民も数人、稽古見学していた。いたって平穏で、常に報道陣に取り囲まれている今とは違い、取材で訪れていたのは1人だった。部屋関係者や地元市民に話を聞くと、今では驚きの証言が次々と飛び出した。

 証言(1) 「昨日(11月13日)まで貴ノ岩関は普通に稽古していますよ。昨日もおとといも、毎日です」。

 証言(2) 「そこ(部屋宿舎)でまだ寝ていて、今も起こそうとしたのですが、まったく起きずに熟睡しています。いつも起こす役割の人間が早い時間から取組で出かけてしまったので、まだ寝ているだけだと思います。すみません」。

 証言(3) 「まだ頭からぶつかることはできませんが元気そうで、そのうち場所も出られると思います」。

 さらに翌日の11月15日の様子として、写真週刊誌にも笑顔の写真が掲載されていた。約1カ月後の現在まで姿を見せないままとは、この時は思ってもいなかった。相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は「貴ノ岩の体調が心配」と繰り返す。貴ノ岩の息づかいが聞こえてきそうな問題発覚当初とは違い、部屋関係者も口を閉ざし、元気かどうかさえ分からない状態。出身のモンゴルでも、本格的に安否を気遣う声が出始めているという。捜索という別な側面で、警察が介入する事態にならないことを願うばかりだ。【高田文太】