大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)に、史上初の処分が科されることが27日までに濃厚となった。日本相撲協会は今日28日、臨時の理事会と評議員会を開き、同親方への処分を協議する。元横綱日馬富士関の貴ノ岩への暴行事件で、貴乃花親方は巡業部長ながら協会への報告を怠った点が問題視されており、理事からの強制的な降格か業務停止の処分となる見通し。ともに前例がないため、本来は「降格」より軽い「業務停止」が、実際は重い処分となる逆転現象も現実味を帯びてきた。

 節目の日を翌日に控えても、貴乃花親方は動じる様子を見せなかった。全ての親方衆が集まる年寄総会の会場へ、いつも通り胸を張って入った。会議は来年度の事業計画説明、八角理事長(元横綱北勝海)の1年の総括など約30分。最後に協会執行部から「何かありますか?」と質問を促されたが、誰も反応しなかったという。貴乃花親方は終始無言のまま部屋に戻った。

 20日の前回臨時理事会で貴乃花親方以外、元日馬富士関の暴行事件の関係者には処分が出た。危機管理委員会の聴取を受けていなかった同親方だけが、処分先送りとなっていた。加害者である元日馬富士関の師匠で監督責任を問われた伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が、辞任して役員待遇委員となり実質的な1階級降格。貴乃花親方は巡業部長ながら、秋巡業中に起きた暴行事件の報告義務を怠ったこと、事件への一連の対応などを問われ、科される処分は(1)降格(2)業務停止のいずれかが有力視される。

 (1)降格 責任を認めて辞任した伊勢ケ浜親方と異なり、貴乃花親方は自身の正当性を主張している。20日も巡業部長の責任は果たしたという内容の文書を持参し、理事会出席者全員に配布した。辞任を選ばず仮に「降格」となった場合、事実上の理事解任となる。これまで強制的に理事職を外された前例はない。解任となれば規定で、1週間以上空けた評議員会でしか処分は確定せず、完全決着は越年となる。ただし約1カ月後の役員候補選挙で出馬すれば復権は確実。事実上、約1カ月しか効力はない。

 (2)業務停止 本来は「降格」よりも軽い。だが役員候補選挙を間近に控える現在は、異なる意味を持つ。協会の行事にかかわることができない「業務停止」に2カ月以上など期間が長引けば、選挙に出馬できない。前例がないため処分の詳細は不透明だが、この先約2年は理事職に就けない可能性が出てくる。

 この時期ならではの逆転現象の可能性を残し、今日、処分が決まる。どうなろうとも、選挙への影響は避けられない。