白鵬に続き、稀勢の里も消えたが、横綱鶴竜(32=井筒)は6連勝だ。元大関の琴奨菊の強烈な押し込みを巧みにしのぎ、寄り切った。4場所連続休場明けの“進退場所”で、元横綱日馬富士関の暴行事件に関連し、無給となった場所で大奮闘。2度目の優勝を飾った15年秋場所以来の1人横綱で、16年九州場所以来4度目の賜杯に突き進む。関脇御嶽海、平幕の栃ノ心と朝乃山も全勝を守った。

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 琴奨菊のがぶりを、突進を、鶴竜が3度しのいだ。立ち合いすぐつかんだ右上手の1枚まわし。伸びてたわみ、ぐらぐらしても、自分より23キロ重い巨体を操った。最後は左下手でまわしをつかみ、勝負どころで体をくっつけ、寄り切った。時間のかかった6勝目。早い勝負が理想だが「悪い中でも自分の相撲を取るのが大事だから」。激しい1番を平然と振り返った。

 元横綱日馬富士関の貴ノ岩への暴行現場に居合わせながら、騒ぎを止められなかったため、1場所無給の処分を受けた。しかし、気にするはずもない。「自分の人生をかけてやっていることだから」。お金はプロの値打ちであって、生きがいではない。

 昨年は全6場所中、春以外の5場所を休んだ。自分以外の3横綱が優勝を独占した。蚊帳の外だった悔しさ。「それはもちろんある。それを今年にぶつけたいと思う」。両足首負傷から復活の手応えを得た、昨年九州場所の直前に腰痛を発症。「また休まなきゃダメなのか?」。まともに動けぬ10日間で気持ちを切り替え、体を絞った。今は食後で155キロ。3キロ減で腰に優しい体になった。

 前日の白鵬に次いで、この日は稀勢の里が休場を決めた。「そういうのは気にしないようにね」。1人横綱になるのは、15年秋場所以来。日馬富士(当時)が全休、白鵬が3日目から抜けて、12勝3敗で照ノ富士との決定戦を制し、優勝した。場所前“最も危ない”と目された男の6連勝。風は鶴竜に吹き始めた。【加藤裕一】