西前頭筆頭の逸ノ城(24=湊)が、新三役の東小結貴景勝を破り、5連勝を飾った。自己最高で現在の幕内最重量でもある215キロの巨体で、相手の突き、押しに動じず、最後は押し倒した。貴景勝とは4度目の対戦で初白星。前日9日目には阿武咲から2度目の対戦で初白星を挙げており、ともに21歳の小結コンビのカベとなった。6勝4敗で、三役復帰の可能性が出る勝ち越しまであと2勝とした。

 幕内最重量215キロの巨体は、だてじゃない。貴景勝から攻められても構わず前に出た。じりじりと相手を土俵際に追い詰め、最後は押し倒して5連勝だ。「相手の引きを怖がらずに取れた。落ち着いて取れていることが一番」と、積極性と冷静さを併せ持つ精神面の充実を勝因に挙げた。

 自己最重量となった大きな体が、心に余裕を生んでいる。14年初場所の初土俵から1年足らずで新三役となり、15年名古屋場所まで1年半の間に関脇、小結は4場所も務めた。その間、200キロを超える体重を維持。200キロ超えの大関誕生かと期待も人気も集めたが、その後、2年半は三役返り咲きを果たせず。ダイエットに活路を見いだそうと186キロまで落とした。だがストレスをかかえるなど心身のバランスを崩し、自然体に戻した昨年11月の九州場所で10勝。この日は「好調という感覚は」と報道陣に問われると、即座に「あります」と返答し、自信をみなぎらせていた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は、敗れたが横綱白鵬に善戦した2日目に「逸ノ城は今場所、活躍できそうだ」と予言していた。この日も「自信が戻ってきた。ドシッと構えられたら(相手は)押し切るのは大変」と、体重が戻ったことで復調したと分析。藤島審判長(元大関武双山)も「明らかに体重を落としたのは失敗だった。あの時は(体が)しぼんで圧力がなかった」と話していた。

 貴景勝、阿武咲の21歳小結コンビには先場所まで白星がなかった。それが今場所は連破。かつての「怪物」がカベとなり。母国モンゴルではゲルと呼ばれる移動式住居で、氷点下30度の中で遊牧生活を送るなど冬は大歓迎。前日9日目に雪が降ったが「寒いのは好き。この体重も慣れてきて動きもいい」と、余裕の表情を見せた。2年半ぶりの三役返り咲きまで、連勝を止めるつもりはない。【高田文太】