西前頭3枚目栃ノ心(30=春日野)が賜杯レースの単独トップに浮上した。前日に横綱鶴竜に初黒星をつけた関脇玉鷲の強烈な突き押しに苦戦したが、最後はもろ差しの体勢から寄り切り、11勝1敗とした。同じく1敗で並んでいた鶴竜が結びの一番で敗れ、頭1つ抜け出した。

 2度仕切りが合わず、3度目で立った。「ドキドキした」というが「立ち合いで(玉鷲を)止めて、気がついたら中に入っていた」と無我夢中の1番を振り返った。13年名古屋場所で前十字及び内側側副靱帯(じんたい)を断裂した右膝に“爆弾”を抱えているが、昨年11月の九州場所前から、冬巡業、今場所前と充実した稽古をこなした。体調は負傷後最高だ。

 「立ち合いに迷ってない。いい形でも、悪い形になっても迷わず前に攻めるようにしている」。残り3日。06年夏場所の序ノ口デビューから所要70場所目にして、初優勝のチャンスが巡ってきた。「それを考えるとドキドキして硬くなる。1つ1つ、1日1番に集中していきたい」。日本から約8000キロ離れた西アジアのジョージアにいる愛妻ニノさん(30)と、長女アナスタシアちゃんに吉報を届けるためにも、自分の相撲に没頭する。