弟子だった元力士が傷害罪で有罪判決を受けていたことが判明した春日野親方(55=元関脇栃乃和歌)は25日、日本相撲協会への報告を、暴行が起きた数日後に行っていたと明かし、隠蔽(いんぺい)との報道を否定した。初場所12日目の打ち出し後に報道陣に対応し「隠蔽とのご指摘について、日付まで覚えていませんが、数日後、1週間以内に協会に報告し警察の捜査にも全面的に協力しました」と話した。事件が起きた当時の北の湖理事長(元横綱=故人)や、当時の危機管理担当顧問と広報部長だった出来山親方(元関脇出羽の花)に伝えたとした。

 事件は14年9月5日に春日野部屋の兄弟子が、弟弟子の矢作嵐さん(22)に対して殴ったり蹴ったりする暴行を加え、全治1年6カ月の重傷を負わせたもの。裁判で矢作さんは、親方は「冷やしておけば治る」などと言って早期に適切な治療をさせず、症状を悪化させ、元力士に対する指揮監督も怠ったと訴えている。

 事件を巡っては、矢作さんが14年10月に元力士を傷害容疑、春日野親方を保護責任者遺棄容疑でそれぞれ刑事告訴。元力士は16年6月に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が確定した。春日野親方は不起訴処分になった。元力士、矢作さんともに引退しており、法律などに精通する協会の担当者は「今回の件は、協会員ではない方の判決で、個人情報の観点からも取り立てて公表するものではない」と説明。暴行が起きた当時未成年だったことに加え、退職者の個人情報を、本人に断りなく公表しないのはどの組織も取る手段だ。

 またこの日、矢作さんが昨年3月22日付で、春日野親方と加害者の兄弟子に3000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことも分かった。