不祥事が止まらない相撲界は、ついに全力士を対象に聴取が行われる見通しとなった。大相撲初場所は28日、東京・両国国技館で千秋楽を迎えた。日本相撲協会の監督官庁である林芳正文部科学相が、協会の八角理事長(元横綱北勝海)と会談し、再発防止を訴えた。協会は謝罪すると同時に、2月1日の理事会で再発防止策の検討委員会の設置を明らかにした。全力士約650人に対し、過去にさかのぼって不祥事がなかったかを聴取し、出直しを図る。

 八角理事長と林文科相との会談は、結びの一番後に行われる表彰式の前に行われた。昨年11月に判明した元横綱日馬富士関による暴行事件に端を発し、立行司式守伊之助のセクハラ行為、十両大砂嵐の無免許運転、さらには過去に起きた春日野部屋所属力士が有罪判決を受けながら公表されていなかった傷害事件。相次ぐ不祥事に、すでに相撲協会は文科省から、再発防止への取り組み徹底を命じられていた。その中で、全力士を対象とした不祥事の実態調査に話が及んだ。

 林氏は、安倍首相の代理として出席した内閣総理大臣賞授与式後に報道陣の取材に応じた。全力士を対象に事情聴取を行う可能性について「(八角理事長は)そういう趣旨のことをおっしゃっていた」と認めた。2月1日の理事会で、再発防止策の検討委員会を設けることも明らかにした上で、聴取は同委員会が主体で行うと説明した。林氏は「相撲の人気がいろんな不祥事によって損なわれかねない」と危機感を示した。

 八角理事長は「ご迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪。協会は、過去にさかのぼって不祥事を調査するという。詳細については、第三者による委員会のため明言は避けた。だが、監督官庁の意向をくんだ提案だけに、面談形式かアンケート形式かは未定だが、全力士への聴取を実施することになりそうだ。林氏は「何年と区切ることなく、調べられる限り調べると言っていた」とも話した。

 千秋楽のこの日は、恒例の協会あいさつが行われ、八角理事長は土俵上で「昨年末からご心配をおかけ致しており、大変申し訳なく、おわび申し上げます」と、異例の2場所連続の謝罪を行った。不祥事続きでも15日間満員御礼が続くファンを前に「相撲協会は真剣に再発防止に取り組んでまいります」と引き締めた。角界は前代未聞の大規模な聴取で出直すことになった。

 ◆過去の力士調査メモ 2011年2月に大相撲八百長問題が発覚。特別調査委員会を設置し、十両以上の全関取への事情聴取を行った。同月の理事会で情報提供を求めるホットライン開設と再発防止委員会(のちに大相撲新生委員会に名称変更)の設置を決定。4月11日に特別調査委が調査結果を報告し、計25人が処分された。