元前頭の双大竜(35=時津風)が3日、東京・両国国技館で断髪式を行った。同じ時津風一門の親方衆や横綱鶴竜らも参加。約300人がはさみを入れ、最後に師匠の時津風親方(元前頭時津海)が止めばさみを入れた。故郷の福島県からも大勢の関係者が集まり、随所に声援が飛んだ。双大竜は、2時間近い式の序盤から目頭を熱くさせていた。

 身長は179センチで体重は120キロ前後と、やや細身の体形から機敏な動きを披露し、巨漢力士にも立ち向かう姿が人気だった。特に13年間の現役生活で、立ち合いの変化は1度もなく、常に真っ向勝負を挑む姿がファンの心をつかんだ。「いろいろな意見はあるけど、見に来ているお客さんにとっては、相撲を見るのがその日だけかもしれない。変化すると、ため息が漏れているのが分かるので、あっけなく負けることもあるけど、一生懸命取っている姿を見てもらいたかった」。特に地元福島県が被災した11年の東日本大震災以降は強く思うようになり、愚直に土俵と向き合った。

 15年夏場所で十両から陥落して以降、幕下で取り続けたが、相次ぐ故障もあって引退を決意した。師匠の時津風親方は「何でもコツコツとやるまじめな性格。まじめすぎると思うぐらい。今はただ『お疲れさま』『よく頑張った』という気持ちしかない」と、労をねぎらった。本人の希望をかなえるため、両国国技館で断髪式を行う段取りを踏み、この日実現した。双大竜も「国技館で断髪式をやりたかったのでありがたいです。内容の濃い13年間(の現役生活)だった。相撲界で学んだのは忍耐と、あきらめない気持ち。自分1人では乗り越えられなかったことも多かったけど、周りの人に支えてもらってここまでくることができた」と、周囲に感謝した。

 「ダンディにしてください」と依頼して仕上がった、やや長めの新たな髪形には「軽いですね」と、目を細くして笑った。今後は日本相撲協会に残らず、柔道整復師の資格取得のため、4月から3年間は都内の専門学校に通い、トレーナーなどを目指す。「けがが多かったので、そういう人の手助けになれば。あとは何らかの形で地元福島の力にもなりたい」。第2の人生でも、変化なしで真っ向勝負を挑み続けるつもりだ。