横綱鶴竜(32=井筒)が物言いがつく際どい一番を制し、7連勝を飾った。西前頭3枚目の貴景勝と激しい突き、押しの展開から最後は押し出し。その際に、鶴竜の左足親指が出たとして、物言いがついたが、審判による約3分半の長い協議の末、軍配どおりの結果となった。今場所早くも2度目の物言いとなったがいずれも白星。16年11月の九州場所以来、1年4カ月ぶり4度目の優勝へ流れも引き寄せ始めた。また、平幕魁聖も全勝を守った。

 NHKの生中継が珍しく延長された。いつもは番組が切り替わる午後6時に、結びの一番後の土俵で5人の審判が話し合う姿が映し出されていた。行司の軍配は鶴竜の押し出し。だがその際に、勢い余って鶴竜の左足親指が、先に出ていたのではないかと物言いがついた。温厚な鶴竜が「もう一丁ならもう一丁と思って待っていた。気持ちを切らさないようにしていた」と、険しい表情で土俵を見続けた。5人の審判の輪が解けると「軍配通り」と、約3分半の協議の末にようやく白星が確定した。

 危うい場面も多かった。立ち合いで頭からぶつかったが貴景勝にすぐに胸元に潜り込まれ、突き起こされた。土俵際まで押し込まれながらも、いなして体勢を入れ替えた。左のど輪で逆に土俵際へ追い詰め、最後は体ごと押し出した。だがその際の左足親指に物言いがついた。土俵際で砂が飛び散ったが「中の砂がはじいただけ。何でだろうと思った。(左足が)俵の上に乗ったけど、出た感触はなかった」ときっぱり。「怒ったことがない」と言い切る“仏の鶴竜”が、珍しく感情を表に出して話した。

 宝富士との5日目も物言いがつき、同体で取り直しとなった。場所前から右手の中指、薬指、小指と3本の指を負傷し、まわしを取る動きをするたびに痛む。10日間も残して、取り直しはダメージを残すことになるが「(まわしを)取るなら取る、取らないなら取らない。割り切りではなく、思い切りよく取る」と、負傷を言い訳にしなかった。

 先場所は初日から順調に10連勝後、終盤4連敗で優勝を逃した。逆に今場所は7日間で2度も物言いがつくなど辛勝も多いが全勝。「これをものにできたので、またいい相撲を取りたい」。流れは優勝へと向かい始めた。【高田文太】