横綱鶴竜(32=井筒)が自己新となる11連勝を決めた。幕内最重量215キロの小結逸ノ城のまわしを、薬指脱臼の完治していない右手でつかみ、力強く寄り切った。対戦成績9勝2敗で、得意の怪物退治だ。先場所に10連勝後、悪夢の4連敗が始まった“魔の11日目”を走り抜け、16年九州場所以来4度目の賜杯へ、一直線だ。

 60キロの体重差をものともしない。逸ノ城に左上手でまわしを取られたが、鶴竜は「むしろ、そこでもっといい体勢に持っていけた」という。長引く前に、勝負をつける。がっちり握った左上手のまわしをひきつけ、右下手はまわしこそ切れたが、さらに深く差し込んだ。そのままグイグイと力を込めて、215キロの巨体を寄り切った。

 過去の対戦成績は8勝2敗。誰もが嫌がるスーパーヘビー級の料理法は頭にあった。「速い相撲でね。相手のペースでゆっくりやったらダメ」。09年夏場所で新三役になった頃からつけるノートがある。師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)に「頭で覚えても忘れちゃうぞ」と言われ、取り口を書き留めるようになった“鶴竜メモ”に、攻略法は保存されている。

 先場所は4日目に寄り切りで勝った。16年夏場所以来8場所ぶりの対戦で「以前はただでかいだけだったけど、体に筋肉がつまってきた感じがした」と成長を感じてはいたが、問題にしなかった。

 嫌なイメージを断ち切った。4場所連続休場から、進退をかけた復帰場所だった先場所は、10連勝後に4連敗。単独トップに立っていた優勝争いから、一気に脱落した。ただ、5場所ぶりに“完走”したことは大きかった。「序盤から飛ばしてたから、疲れが出た。ペース配分を間違えた。でも、久しぶりに15日間取りきったからね。1日一番、取組の瞬間だけに集中して。後はやり過ぎないように」。同じ失敗はしない。

 先場所千秋楽に脱臼した右手薬指、2月1日に遊離軟骨除去の内視鏡手術をした左足首。不安を抱える2つの患部も「ぼちぼちです」といい、ほぼ問題はなくなった。自己新となる11連勝を決め、単独トップで残り4日。「のっていきたいですね。もっと集中してね」。いつもの静かな口調に、気迫がこもった。

【加藤裕一】