横綱鶴竜(32=井筒)が4度目の優勝を飾った。後続と2差で迎えた豪栄道と結びの一番。土俵際ではたき込み、13勝1敗とした。

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 引き技で優勝を決めた鶴竜だが、これまでの悪い癖で出ていた引きとは少し、意味合いが違うと思う。今までは勝ちたいがために、つい出てしまったが今場所の引きは、あくまでも流れの中で出たもの。相手を崩して状況を打開しようという引きだ。精神的に追い込まれてのものではないから下半身が残っている。何より立ち合いの踏み込みが強いから引きも効いてくる。2場所連続で1人横綱の重責の中、よくその務めを果たしたと思う。

 指の状態などコンディションとしては先場所より厳しかったと思う。それを出場に踏み切らせたのは、先場所の雪辱という思いもあったろうし、自分も休めば本場所で横綱土俵入りがなくなるという使命感もあったろう。それが鶴竜の強さ、信念なんだろう。淡々として見えるが、内に秘めたものは、相当なものがある横綱だ。(元大関朝潮・高砂浦五郎=日刊スポーツ評論家)