横綱鶴竜(32=井筒)が5度目の優勝を、悲願の2場所連続で決めた。勝てば優勝が決まる、白鵬との横綱対決を寄り切って14勝1敗。1差で追っていた関脇栃ノ心(30=春日野)も勝ったため、負ければ優勝決定戦にもつれる事態を回避した。平成以降に昇進した横綱10人のうち、ただ1人連続優勝なしの汚名を返上した。

 優勝決定戦のことなど、まったく考えになかった。鶴竜は、横綱同士の結びの一番だけにかけていた。頭をつけて前まわしを引き、一気に寄ったが、土俵中央まで戻された。それでも体勢優位は変わらなかった。すべての力を振り絞って、もう1度寄ると、白鵬の粘りと気力を上回った。会心の寄り切り。30秒近い大相撲を制し、疲れ果てた足取りで支度部屋に戻ってきた。

 15年9月の秋場所以来、2年半以上も離れていた両国国技館での優勝は「これ以上、最高なことはない」と、喜びをかみしめた。何よりも、ずっと心に引っかかっていたという「連覇のない横綱」という汚名を返上できたことがうれしかった。特に平成以降は、横綱昇進は2場所連続優勝が条件のようになっていた。鶴竜の場合、優勝決定戦の末に敗れた、14年初場所の優勝同点と翌春場所の優勝で昇進。平成以降に昇進した10人の横綱のうち、ただ1人、連覇がなかった。

 鶴竜 横綱はみんな、上がる時に2場所連続で優勝している。自分だけラッキーで上がったと思われたくない気持ちが、ずっとあった。「連続優勝して(実力を)証明してみせる」。そう言いたい自分がいた。

 呼吸も整いきらない支度部屋で、心にしまっていた思いを初めて明かした。けがで昨年九州場所まで4場所連続休場し、衰えを指摘されたり、進退が問われたり、周囲の雑音に耐え、この日が来ると信じていた。優勝インタビューでは「生まれ変わり、進化したい。鶴竜はこういう相撲を取れるんだという気持ちでやってきた」と胸を張った。

 肩の荷が下りると、うれしいサプライズが待っていた。ムンフザヤ夫人が、同夫人の両親とともに、内緒で鶴竜の両親をモンゴルから招待していた。「アレッと思った。父は国技館に来たことがなかったから」と、予期せぬ親孝行もできた。誰よりも白星を重ねる今年、まだ連覇を止めるつもりはない。【高田文太】