大関昇進を事実上決めた関脇栃ノ心(30=春日野)。3回連載「新大関栃ノ心 ジョージア オン マイ マインド」で、角界屈指の怪力相撲の原点や、人物像に迫ります。

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 栃ノ心の体はすごい。身長192センチ、体重170キロ超の巨漢でいて、腹筋の形が見えそうな筋肉質。太もも回りは実に右91センチ、左87センチもある。盤石の右四つ相撲は腕力が注目されがちだが、つって寄るコツは「下半身。引きつけて、おなかに乗せる」と説明した。

 祖父ハレバさんに鍛えられた。37歳にして旧ソ連のサンボ王者になった猛者で、04年に63歳で他界するまで脳梗塞を6度も患った。その生命力に医者が舌を巻いた。「尊敬してた。かわいがってもらったからね」。ジョージアの首都トビリシ近郊ムツタヘで生まれ育ち、12歳から、ハレバさんの教えでランニングが日課になった。毎朝、山道を往復10キロ以上。途中で道が消え、石のごろごろした河原を走る。折り返し地点の温泉で、背負ってきた12リットル入り容器を満タンにして戻る。2度さぼって、すぐバレた。川の水を入れた。「水の色が違うって言われてね」と懐かしそうに笑った。

 柔道のオリンピック代表候補合宿では週2回、20キロを走った。体重100キロ超もあるのに、40人中2位だったこともある。「今は膝やったからダメだけど、走るのは好きだったよ」。怪力相撲の原点は、故郷にあった。【加藤裕一】