大関高安(28=田子ノ浦)が、かど番脱出に王手をかけた。取組前まで8勝10敗と合口のよくない小結玉鷲を、土俵際で逆転の突き落とし。3横綱と新大関栃ノ心が休場し、本命不在の優勝争いが展開される中、初優勝の可能性をつないだ。全勝の関脇御嶽海、1敗の朝乃山を、遠藤、栃煌山とともに2敗で追っている。

 絶体絶命の高安が、土俵際でクルリと回って体勢を入れ替えた。前のめりに攻め込んできた玉鷲を、そのまま土俵外へと突き落とした。九死に一生を得て今場所初の3連勝。かど番脱出に王手をかけた。「勝つことが大事。内容は伴わないけど、勝っていけばまた違う」と、優勝争いに離されることなく2敗を守った。

 実はこの日の朝稽古後、玉鷲戦が後半戦を占うカギになると話していた。「今日の相手に立ち合いで当たって攻められれば、それがきっかけになると思う。巻き返すための、きっかけをつくる相撲でもある」。高安にとって玉鷲は、昨年九州場所2日目に敗れた際、右太ももを肉離れして休場に追い込まれた因縁の相手だ。対戦成績は取組前は8勝10敗。立ち合いから圧力に屈したことも数知れず。それは突き、押しを得意とする高安が目指す相撲でもあった。真っ向勝負でどこまでやれるか。「優勝」を口にする権利があるかどうか、見極める相手だった。

 最後こそ危なかったが、調子の指標とする相手に立ち合いで手応えを感じていた。右のかち上げから突き放すことはできなかったが「しっかりと踏み込めた。踏み込めたからその分、余裕ができた」と、立ち合いで先手を奪ったことを土俵際逆転の要因と分析した。

 ここまで相手の粘りで敗れた千代の国戦などドタバタの相撲が続く。だが「日に日によくなっている」と断言。初優勝へ確認事項の1つをクリアし、いよいよ加速する。【高田文太】