横綱対決は白鵬(33=宮城野)に軍配が上がった。稀勢の里を寄り切って13戦全勝とした。昨年初場所で敗れて以来の対戦で、力の差を見せつけた。14日目に白鵬が大関豪栄道に勝てば、5場所ぶり41度目の優勝と史上初の幕内通算1000勝が決まる。

もろ差しになって寄り切った白鵬は、右手で稀勢の里の腰辺りをぽん、とたたいた。横綱同士での待ちに待った取組は、7秒5での決着だったが濃密な時間だった。「これまでよく戦ったと思いますよ」。同じ横綱としての苦労を知っているからこそ、右手がとっさに出た。

負けた昨年初場所の悔しさが、ずっと心に残っていた。だから立ち合いで、その時と同じように左差しを狙った。右で張って左を差すと、前に出ながら右も差した。頭を抱えられたが腰を落として一気に前へ。今回は逆転を許さず、全勝を守った。「あの形で1年前に負けてますからね。それにもう1回チャレンジしたいという感じですね」と雪辱した。

数々の名勝負を繰り広げた2人だからこそ、館内の興奮は最高潮だった。同時に、異様な雰囲気も流れた。圧倒的に稀勢の里への声援が大きく「白鵬負けてやれ」とヤジが飛ぶほどだった。それでもぶれないのが、横綱12年目の強さ。「何だろうね。お互い休場明けだしね。来てるお客さんも分かっているという感じだった」と寛大な心を持って臨んだ一番。幕内初対戦の06年夏場所から始まった60回目の対戦を44勝(16敗)で終えて「気持ち良かったです」としみじみとした。

単独首位を守り、今日の豪栄道との結びの一番に勝てば、41度目の優勝と幕内1000勝を同時に達成する。ようやく目の前にまできた賜杯をつかむために、ここまで3日連続で朝稽古を非公開にするなどして、集中力を高めている。「頑張ります」と多くは語らなかったが、表情に緩みはない。もう1つ、稀勢の里に横綱の威厳を見せる時がきた。【佐々木隆史】