横綱白鵬(33=宮城野)が、今年初めてとなる41度目の優勝を達成した。大関豪栄道を下して、同時に史上初の幕内通算1000勝も達成。4月に死去して天国で見守る、父ジジド・ムンフバトさんにささげる記録的な優勝となった。さらに、初優勝した06年夏場所から13年連続での優勝となり、12年連続で優勝した大鵬を抜いて史上最長となった。

今年初めての優勝をかけて臨んだ結びの一番。数々の記録を打ち立ててきた白鵬にとっても重圧はかかった。

1度目の立ち合いはつっかけて、2度目の立ち合いでは先に手を着いた豪栄道を前に、自ら嫌って立った。3度目の立ち合い。左前みつに手がかかるも外れて左上手を取ったが、その一瞬の隙を豪栄道に突かれた。前に出られて土俵際へ追い込まれたが慌てず、上手投げで勝負あり。優勝をかみしめるかのように、左腕を軽く一振りした。

支度部屋では無数のカメラのフラッシュを浴びた。「あー、目が痛い」。言葉とは裏腹に笑みを浮かべた。昨年の九州場所以来5場所ぶりの優勝。白鵬にとっては久しぶりの優勝に「んー、話せば終わらない」とあえて多くは語らずに喜びを表現した。

4月に最愛の父ムンフバトさんが、肝臓の病気などで亡くなった。1968年(昭43)のメキシコ・オリンピック・レスリング銀メダリストで、モンゴル相撲の元横綱。そんな偉大な父の背中を追って、幼少期にモンゴル相撲を始めようとした。しかし「まだ早い。骨ができていない」と止められた。適齢期の16歳をまだ迎えておらず、バスケット少年になった。それでも夢を捨てきれず、16歳になる01年に海を渡って大相撲の扉をたたいた。

父のDNAを引き継いだ白鵬は、すぐに頭角を現した。新十両昇進を決めた18歳の03年九州場所では、1場所だけで体重が15キロも増加。師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)も「あんなに小さい体の子がここまでこれるとは思ってなかった」と目を丸くした。父の一言が、白鵬をここまで大きくした。

今場所は8日目に横綱800勝を達成。そしてこの日、41度目の優勝と幕内通算1000勝を達成。次はどんな大記録を狙うのか-。「目指せ1001勝」。まずは今日の一番に集中する。【佐々木隆史】

▼幕内後半戦の阿武松審判長(元関脇益荒雄)のコメント 白鵬の、あの待ったはいただけない。これだけ優勝している横綱。きちっと合わせることはできるはず。相撲自体はさすがです。ここという時の集中力と、今場所は気迫があった。やはり第一人者。全ての記録が通過点なのでは。