下咽頭がんと肺がんの影響による衰弱のため、8日に70歳で亡くなった、大相撲の元横綱で、プロレスラーやタレントとしても活躍した輪島大士さんの通夜が14日、東京・青山葬儀所で営まれた。現在、相撲協会の広報部長を務める芝田山親方(元横綱大乃国)、元武蔵川理事長で元横綱三重ノ海の石山五郎氏、3代目元横綱若乃花の花田虎上氏ら元力士や、現役力士では前頭輝、幕下豊響、芸能界からは関口宏、五木ひろし、とんねるずの石橋貴明と木梨憲武、勝俣州和らが参列。約500人が集まった。

土俵をイメージした祭壇に飾られた遺影は、喪主の妻留美さんが選んだという横綱時代の土俵入りだった。朱色のひつぎは、昨年まで毎年のように見学に訪れていた、地元石川県七尾市の石崎奉登祭に由来。同祭への、輪島さんの出身地域からの参加者が着用する衣装の色という縁で朱色にした。ひつぎの中で輪島さんは、横綱時代に最も好んでいた薄緑色の着物を着ていた。

参列した野球解説者の田淵幸一氏は、阪神での現役時代から続く、40年以上の付き合いだと明かした。当時、輪島さんは大阪での春場所中とあって、合間を縫って甲子園球場に招き、本人の意向で打撃練習に参加したところ「5、6球打って膝を痛めて休場した」(田淵氏)というエピソードを明かした。互いを「横綱」「監督」と呼び合い、深い交流があったという。田淵氏は「豪放磊落(らいらく)。純粋で、誰かをだまそうというところがまったくなかった。最高の男だった。お通夜で、こんな話ができるのはあいつだけ」と、故人と一緒に現役時代に撮影した写真を何枚も持参し、当時を思い出していた。

他にも五木ひろしは、日本レコード大賞を受賞した際に、お祝いに駆けつけてくれたこと。芝田山親方は約1年務めた付け人時代に、当時、付け人の中でも最も若いぐらいだった自身にも気さくに話しかけてくれた話。元3代目若乃花の花田虎上氏は、父で故人の元二子山親方(元大関貴ノ花)と輪島さんが親友だった関係から「輪島ちゃん」と親しみを込めて呼んでいたエピソードなどを明かした。通夜にもかかわらず、参列者が口々に型破りな輪島さんとの思い出話を語り、笑顔の絶えない、故人の人柄を表すような通夜となった。葬儀は15日に行われる。