暴力根絶を目的に今年2月、日本相撲協会の第三者機関として発足した「暴力問題再防止検討委員会」(委員長=但木敬一・元検事総長)が19日、東京・墨田区内のホテルで記者会見を開き、約8カ月にわたり実施してきた調査内容、結果を最終報告として発表した。

再発防止検討委は昨年10月に起きた、元横綱日馬富士による幕内力士・貴ノ岩に対する傷害事件などを受けて設置された。委員は但木委員長はじめ、元ソフトボール女子日本代表監督の宇津木妙子氏ら4人で構成。鏡山理事ら現役、OBの協会協力員らを含めれば、同会は13人で構成される。5月に1回目の中間報告がされ、今回が最終報告となった。既に5月の中間報告の時点で、親方や力士、行司ら相撲協会関係者ら約900人からの聞き取り調査が終わり、以後は調査結果の集約に務めてきた。

報告書は「骨子」が4ページに集約され、「報告書要旨」として76ページにわたる膨大なものとなった。

それによると角界で暴力を受けた者の割合は、79年の37%から、今年の5・2%と減少傾向にある。暴力発生場所は稽古場以外の相撲部屋内で、生活指導名目で兄弟子が弟弟子にふるうことが多いという。また暴力の事実が師匠らに報告されることは「まれである」とした。

さらに暴力を受ける側は入門後1年目から3年目にかけての力士が多数を占め、逆に暴力をふるう側は入門後4年目から6年目にかけての力士らが多数を占める傾向も指摘。暴力を受けた力士が、逆に年数がたち暴力をふるう側にまわる傾向もあるという。

昨年の元日馬富士関の暴行問題にも踏み込み、現場にいた力士らは指導のための暴力は許容されるという意識があり、これは相撲部屋内の弟子間の暴力の原因と共通すると記述。モンゴル出身力士の間には所属部屋を越えた上下関係、指導・被指導の関係が存在していた、とも踏み込んだ。

これらを踏まえた再発防止策として、師匠ら全協会員の意識革命、師匠や年寄資格の明確化、継続的な研修の実施、外国出身力士に対する施策の実施などを提言としてまとめた。

また但木委員長は「今年から相撲協会はいろいろな規定を設けたが、大事なのは(規定を)作ることではなく、履行すること。暴力を撲滅できるか(の鍵)は相撲協会がお持ちになっている」と話した。日本相撲協会内のコンプライアンス委員会の半数を外部有識者で構成されることを希望するなど、公平性、透明性のある制度づくりを求めた。