元横綱日馬富士の傷害事件を巡り、被害者で平幕の貴ノ岩(28=千賀ノ浦)が慰謝料など約2400万円の損害賠償を求めた訴訟で、貴ノ岩側は30日、訴訟を取り下げた。

貴ノ岩はこの日、福岡・篠栗町で行われた朝稽古に姿を見せて、四股やすり足などの基礎運動で汗を流した。秋場所後に旧貴乃花部屋から転属したため、慣れない稽古内容に苦戦する場面もあったが、笑顔を浮かべるなどリラックスした様子だった。秋巡業を左足首痛で全休したが「少しずつよくなっている。一生懸命やるだけです」と話し、訴訟について問われると「代理人に任せている」と多くは語らなかった。

その後、訴訟を取り下げたことを文書で発表した。「裁判を起こしてから、母国であるモンゴルでは私に対する想像を超える強烈なバッシングが始まり、私の家族もモンゴルで非常につらい目に遭うことになりました。実際に家族から何度も耐えられないとの連絡があり、もう裁判をやめてくれとの要請がありました。私はどのような反応にも立ち向かう覚悟でしたが、これ以上、私の家族がモンゴルでつらい思いをすることは私自身の気持ちとして耐えられません。したがいまして、日馬富士氏に対する損害賠償の請求をせず、治療費をはじめ一切の費用を自分で負担することにしました。これからは相撲道にまい進し、相撲で活躍して、私の家族にはモンゴルで平穏な生活をさせたいと思います」とコメントした。

貴ノ岩は正午に、福岡市内で行われた力士会に出席。帰り際に、訴訟を取り下げたことについて聞かれると「代理人が発表した通りです」と、またしても多くは語らなかった。