大関栃ノ心(31=春日野)が年間最多勝を決めた。東前頭5枚目千代大龍が突き押しの応酬中につきひざ。6勝5敗で、今年初場所から通算57勝とした。4差で追っていた高安も結びで勝ち、53勝としたが、残り4日を全勝し、栃ノ心が全敗であっても、並ぶだけ。栃ノ心が抜かれることはなくなった。

決まり手でない「つきひざ」という意外な結末の瞬間を「俺もわかんないよ。気がついたら(足もとを示して)このへんにいたからね」と笑顔で振り返った。

ただ、喜びは年間最多勝が決まったからじゃなく、白星を1つ重ねたからだ。「57勝? 足りないね。当たり前じゃん。勝ち越してないから。勝ち越しの方が大事だよ」。先場所は大関昇進後初のかど番を経験。脱出に苦しみ抜いた苦い記憶がある。「勝てば気分がいい」が口癖だけに、1年間で1番勝った“勲章”がうれしくない訳はない。また故郷ジョージアでも、メディアが通算勝ち星数を示す“栃ノ心メーター”を作って、盛り上がっていたらしいが…。

この日はジョージアのレヴァン・ツィンツァゼ駐日全権特命大使が「最近、心配だからね」と東京から場所までわざわざ激励に駆けつけた。「立ち合いもそうだけど、当たった後が何か変だよな」とこぼす。本来の調子にはほど遠い。残り4日で2勝以上、石にかじりついてでもとりにいく。