東前頭13枚目矢後(24=尾車)が、新入幕の初日を白星で飾った。西前頭2枚目明生に先手先手と攻めて寄り倒した。17年夏場所で幕下15枚目格付け出しデビューした元アマチュア横綱が、所要11場所目、北海道出身力士としては戦後52人目の新入幕で挑む場所。「やっぱり序盤が大事なので」。目標の勝ち越しへ、幸先の良いスタートを切った。

新入幕初日の硬さを感じさせない。矢後が立ち合いからすぐ右上手でまわしをとった。取ったのが1枚まわしだったため、伸びるが、左も差し、右手をぐいぐい引き寄せて、そのまま一気に寄り倒した。「緊張は若干ありましたけど、思ったより落ち着いてできました」。安堵(あんど)感と充実感を漂わせ、満足そうに話した。

17年夏場所の幕下15枚目格付け出しデビューから、御嶽海に並ぶ所要2場所の最速記録で新十両を決めながら、新入幕にはそこから8場所を要した。もたついた思いがある分、万全で今場所に臨んだ。「稽古もそうですが、まずしっかり体を休めて、痛いところをきっちり治して。“より大事に”という意識で」という。この日の相手、明生には十両で2戦2敗。「いろいろ思い出して、突っ張るよりも(右で)上手が取れないことはないなと考えて」。過去の反省をしっかり生かして、イメージ通りの相撲を取りきった。

白星発進の心地よさか、口調も軽い。初めての大銀杏(おおいちょう)の感想を聞かれると「まだまだ慣れませんが、そのうち慣れます。すばらしいのを結ってもらって感謝していますから」と、背後でまげを整えてくれている床山に聞こえるよう、大きめの声で答え、周囲を笑わせた。

今場所の狙いは1つしかない。「大きな目標というか、小さな目標というか、勝ち越しですね」。北の大地から戦後52人目の新入幕を果たした大器が、堂々たるスタートだ。【加藤裕一】