横綱初挑戦の東前頭2枚目錦木(28=伊勢ノ海)が、鶴竜を寄り切り、初金星を挙げた。初日に豪栄道、2日目に栃ノ心と2大関を破った勢いをそのままに、横綱も撃破した。

初挑戦で初金星は17年秋場所の阿武咲以来。稽古や横綱土俵入りを共にしてきた鶴竜相手に、恩返しの白星となった。

初土俵から77場所目にして迎えた結びの一番。緊張はなかった。立ち合いで左下手を取ると、一気に前へ。土俵際で逆転の上投げをもらうも、かまわず出た。鶴竜の体が飛んだのが先か、錦木の右足が出たのが先かで物言いがついたが軍配通り錦木の白星。21本の懸賞を表情一つ変えずに受け取った。

支度部屋に戻ると頬が緩んだ。「稽古もずっとやってきたし、土俵入りもしている。やっと恩返しができた」。15年夏場所で新十両昇進して以来、場所前に行う時津風部屋への出稽古で何度も胸を借りた。鶴竜の横綱土俵入りでは、露払いや太刀持ちを2年以上務めている。ようやく同じ土俵に立ち一発で恩返しした。

これまでの苦労が実を結んだ。新十両に昇進してから参加した巡業で、稽古土俵に上がらない日は1日もなかった。体調が悪くなっても「せめて一番だけでも」と土俵にこだわった。「インフルエンザがはやった時も巡業が終わった後にかかったり、巡業中に体調が悪くならないんです」とポツリ。誰よりもコツコツと積み上げてきた。

悩みが一つあったが、解消された。「北勝富士も初日と2日目で大関に勝って自分がかすんでたけど、今日はさすがに俺ですね。俺も負けてられない」と急成長する若手にライバル意識を燃やしていた。4日目は進退問題を抱える稀勢の里。「調子がいいから、ちょっとだけチャンス」と2日連続の金星を狙う。【佐々木隆史】