稀勢の里の引退について、横綱白鵬(33=宮城野)が16日、都内の部屋での朝稽古後に心境を語った。一報は「朝、奥さんから聞いた」と言い、第一声は「さびしいって感じですね」だった。

稀勢の里の3日目までの相撲を土俵下から見た印象は「相撲をとろうって見えてました。表情も良かった。でも、終わってみて考えてみれば、心ここにあらずというか」だったという。

一番の思い出について問われると「それは63連勝で止められた時ですよ」と即答した。「遠慮なく向かって来た。だから、連勝を止められた。横綱になってくれた時はうれしかった。連勝を止めた力士ですからね。あの黒星があったからこそ、私も頑張れたんです」と話した。

稀勢の里の人柄を「本当に明るくて、初々しい感じ」と語った。「周りからは言葉少な、暗いとか思っているかもしれないけど、全く逆で、好青年ですよ、私も同じく。稽古場でもどこでも“いやです”と断られたことは1度もない」。

力士としては「上に上がって行こう、行こうっていう気持ちがあった。番付は自分が先に上がりましたけどね。一生懸命さは他の力士に比べると強かったと思います」とたたえる。

稀勢の里が8場所連続休場など、復活に向けて苦しんでいたことに「けがや痛みは、その人にしかわからない」と語った。その際、稽古で相撲をとったり、言葉をかけたりもした。「指導者になる時、横綱を務めた経験があると違います。できる限りのことをしようと思った。でも、一門が違うのでね。もっとこうしたら良かったという思いはあります」

稀勢の里に掛ける言葉は「本当にお疲れさまでした、しかない」という。日馬富士に続き、稀勢の里の引退で、横綱は2人になる。「(横綱は)つらい、大変なことなんです。周りからの見た目は良くても、勝たないとダメ。極端に言えば、引退、負けるっていうのは、死ぬってこと。託された感じになりますね。その分頑張っていくしかないです」と話した。