関脇玉鷲(34=片男波)が、優勝戦線に踏みとどまった。平幕の錦木を押し出し、2敗を守った。横綱稀勢の里に続き元関脇豪風が引退し、この日は元幕内の幕下宇良、平幕の千代の国と琴勇輝と故障者が続出…。波乱が続く本場所で、04年春場所序ノ口デビュー以来無休、現役最長通算1146連続出場中の“34歳の鉄人”が存在感を発揮した。横綱白鵬は全勝を守り、後続に2差つけて独走態勢に入った。

腰の重さは平幕屈指の錦木も、玉鷲のパワーは止められない。立ち合いでガツンと頭で当たり、距離を置いてもう1発。右、左と交互にのど輪でのけぞらせ、最後はもろ手突きではじき飛ばした。「ちょっと緊張した。勝ち越しで? やっぱ、そうですね」。そんな繊細さをかけらも感じさせない圧勝だった。

34歳の鉄人だ。スポーツ未体験ながら、モンゴルの先輩鶴竜に巨体を見込まれて角界入りすると、04年春場所の序ノ口デビューから休場がない。この日は幕下宇良に始まり、幕内で千代の国、琴勇輝と故障者が続出したが、現役トップの通算連続出場を1146回に更新した。

横綱稀勢の里が引退、3大関は栃ノ心が休場、豪栄道と高安がもたつき、横綱白鵬の独走気配が漂う場所で「盛り上げないといけないでしょう。そのために頑張るしかない」という。今場所は4度目の三役返り咲きで、関脇に座る。「うれしいね。今までは(元の位置に)上がったな、だったけど、今は(もっと)上りたいという気持ち」。幕内での10日目勝ち越しは、12年夏場所以来2度目の自己最速タイ。根っからスロースターターが34歳で大関を夢見始めた。

188センチ、173キロの巨体に似合わず? 手先が器用だ。手芸が得意で、絵もうまい。日曜大工でイスも作る。この日の取組後は、床山にニマ~っと笑って「バリカタでよろしくね」と、まげの結い加減をラーメン風にリクエストし、周囲の爆笑を誘った。相撲は豪快で、性格はゆるキャラ。不思議な34歳が、白鵬を追いかける。【加藤裕一】

◆通算連続出場 玉鷲の通算連続出場1146回は、序ノ口から幕内までの現役力士の中で1位(初場所10日目終了時点)。昨年の秋場所初日に、それまで1位だった三段目芳東を追い抜く(幕下以下は1場所7番のため)。歴代1位は64年夏場所から86年名古屋場所にかけて、先代不知火親方(元関脇青葉城)の1630回。