新入幕の大相撲初場所で9勝6敗と勝ち越した東前頭13枚目の矢後(24=尾車)が29日、出身地の芽室町に凱旋(がいせん)した。地元後援会主催の幕内昇進祝賀会に出席。同町発祥のゲートボールと町鳥カッコウをあしらった化粧まわしを贈呈された。昨年8月の帯広夏巡業以来の帰道。故郷で祝福され、春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)へ英気を養った。

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故郷で矢後は堂々と宣言した。「まだこのような成績で浮かれず、三役を目指して年内に上がることを目標に頑張りたい」。力強い言葉に祝賀会に集まった130人超の支援者からは「がんばれよー!」と歓声と拍手が上がった。知人はもちろん、小さな子どもからの写真撮影にも笑顔で応え、激戦のつかれも癒えた様子だ。

祝賀会前の記者会見では、9勝6敗で終えた初場所を「やりきった。精いっぱい相撲が取れた。自分の前に出る形になれば勝てる」と振り返った。稀勢の里(現荒磯親方)が引退し、来場所からは日本人横綱が不在となる。中大4年時に全日本選手権を制した元アマ横綱への期待は膨らむが「(横綱に)あこがれはありますが、今は横綱と対戦できる力をつけたい。1日1番です」と冷静だった。

地元は心の支えだ。芽室西中を卒業後は埼玉栄に進み、以後の帰省は年に数回。それでも毎年、芽室神社でお守りを買って身につけているという。今回の帰郷は昨年8月の帯広場所以来で、幕内昇進後初めて。初場所開催中も「芽室からきた」とファンに声を掛けられたといい「去年は幕下だった。(今回は)勝ち越して帰ってこれた。地元の方の応援のおかげで勝ち越せた」と感謝した。

祝勝会では芽室町の名物がちりばめられたデザインの化粧まわしを贈られ、手島旭町長からは「年末までには三役に」とハッパを掛けられた。飛田秀樹後援会会長は「応援ツアーもしたいね」とプランを明かす。新化粧まわしが披露される予定の3月大阪場所には、初の応援団派遣も検討している。「つらいときは芽室町のみなさんの顔を思い出したい」と矢後。故郷のまわしを締め、来場所も力強く前に出る相撲を見せる。【浅水友輝】

 

<矢後の道のり>

◆入門 16年アマチュア横綱のタイトルを引っさげ、中大4年時の17年2月、都内で尾車部屋入りの入門会見を行った。

◆初土俵 17年5月の夏場所で、幕下15枚目格付け出しでのデビューを白星発進。5勝2敗の勝ち越しで終える。

◆幕下V 17年7月の名古屋場所では、東幕下11枚目で無傷の7戦全勝優勝を果たす。

◆新十両 17年9月の秋場所は西十両13枚目で7勝8敗の負け越し。

◆関取陥落 続く九州場所でも7勝8敗の負け越しで、18年1月の初場所で幕下に陥落した。

◆初2桁 18年3月の春場所で再十両となり、同7月の名古屋場所で初めて10勝をマークした。

◆新入幕 東十両筆頭で4場所連続勝ち越しを決めた後の18年12月25日、初場所(19年1月)の新番付が発表され、東前頭13枚目で新入幕を果たす。

 

◆芽室町 1942年(昭17)に町制施行。帯広市西部に隣接し、人口1万8667人(18年12月31日時点)。産業は畑作、酪農が盛ん。主な出身者は大相撲の横綱大乃国(現芝田山親方)、バドミントンで18年世界選手権女子ダブルス優勝の永原和可那、スピードスケート10年バンクーバー五輪代表の土井槙悟。