海洋相撲部から今春、大相撲の裏方になる異色の選手がいる。宮侑汰(3年)で、田子ノ浦部屋に所属して「呼び出し」の修業を積む。21日には大場健太(同)が大嶽部屋入りの会見を開いたばかり。昨夏の全国高校総体(インターハイ)以降に現役を退いたが、相撲にずっと関わっていく。

選手として出場する大会は昨夏以降、宮にはなかった。それでも後輩、同僚に交じって稽古を続けてきた。全国高校総体(インターハイ)の団体戦メンバーだったが、両膝には故障を抱えていた。選手としての相撲は断念しながら、まわしを目的を持って締めてきた。体重のピークは160キロ(身長174センチ)。故障の遠因だったウエートを、落とすための稽古だった。「呼び出しは裏方の仕事。力士じゃないから体重は要らない。フットワークが必要になる」。体重は123キロまで減った。

「地元企業に就職して、子どもたちを指導したいと思っていた」。そんな形で相撲に関わるつもりだった宮は、呼び出しという職種を知って進路に選んだ。人数制限がある特殊な役目だけに、簡単に就くことはできない。田海哲也総監督(58)が、つながりのある相撲部屋に打診して田子ノ浦部屋が引き受けてくれた。

宮は、2月11日から同部屋所属の呼び出しとして修業始め。きょう1日の卒業式に出席するため、27日に一時帰郷した。「少しずつ仕事を覚えていきたい」。今後は、田子ノ浦部屋が日本相撲協会に部屋付きの呼び出しとして申請。手続きが完了して認可が下りれば、新米の呼び出しが正式に誕生する。

大相撲の取組で東西の力士を呼び立てるのが、呼び出しの晴れ舞台だが、仕事の比重が重いのは裏方だ。本場所、巡業先の土俵作り。触れ太鼓などの太鼓たたき。所属部屋ではマネジャー的な役目も務める。村山智明監督(40)は「海洋卒の選手が、相撲と関わる新しいケース」と期待する。「将来は、横綱を呼び立てるような呼び出しになりたい」。宮は、全身に詰まった夢を明かした。【涌井幹雄】

◆宮侑汰(みや・ゆうた)2000年(平12)7月31日、長岡市生まれ。能生中出。相撲を始めたのは小1から。昨夏の全国高校総体団体戦は、予選3試合で2勝、1不戦勝。決勝トーナメント1回戦の希望が丘(福岡、2-3)戦は黒星。174センチ、123キロ。血液型A。