西前頭4枚目の逸ノ城(25=湊)が新入幕だった14年9月の秋場所以来、4年半ぶりに初日から6連勝を飾った。西前頭筆頭の遠藤をはたき込み、横綱白鵬と並んで2人だけ無敗。新入幕場所は13勝2敗の優勝次点。金星、殊勲賞、敢闘賞を獲得する大暴れで「怪物」と称された。その後、伸び悩んできた関取衆最重量226キロの、まさに大器が、初優勝への色気を隠せなくなってきた。

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怪物逸ノ城が、ついに長い眠りから目覚めようとしている。体当たりの立ち合いから、遠藤の頭が下がっていると見るや、すかさずはたき込んだ。6連勝を決めた人気者対決は、わずか4秒3で決着。前日5日目の阿武咲戦に続く引き技での白星に「またこういう流れになっちゃった」と納得はしていない。それでも「体は動いている」と、余力十分で翌日につなげたことに手応え。出身のモンゴルは寒さが厳しいだけに現在の気候は「好き。春なので」と歓迎。“冬眠”明けが近いことを予感させた。

全勝は白鵬と2人だけとなった。優勝争いに絡んだのは13勝した新入幕場所が最初で最後。その後の4年半は11勝止まり。幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「不気味な存在。また何か起きるのか、という。器用さもあって、うまくはまっている」と、226キロのパワーだけではなく、取り口に成長があると指摘した。

新入幕場所の活躍で、すぐテレビCMに起用されたが、現在は放送されていない。相手の遠藤は、そのころから続けてCMに出続けている。本職では年下の貴景勝に先に優勝された。対戦成績も2勝7敗。場所前はプライドを捨てて3度も貴景勝のいる千賀ノ浦部屋に出稽古した。また、部屋を構える大阪・大東市の大阪産大ラグビー部員を招き、土俵で胸を出した。貪欲に強さを求めた。貴景勝の優勝で「次は自分が、という気持ちは」との質問に「ありますよ、やっぱり」。再び怪物と呼ばれる日が、近づいてきている。【高田文太】