元横綱稀勢の里の荒磯親方(32)が初めて、NHK大相撲中継の解説を務めた。力士時代とは一転した滑らかな口調で、各力士の特長などを説明。約2時間の役目を終えると、ツイッターなどでは明快な解説を絶賛する声が相次いだ。

主な力士への荒磯親方の放送中のコメントは以下の通り。

▽嘉風 「相撲の研究がすごいので、いつもアドバイスを求めにいきました。嘉風は1歩目の踏み出しの足が、非常に地面に付くのが速いんですよね。そうすると2つの足でしっかり押せる、しっかり伝わる。そんな相撲を取っているので、突っ張られても効いていない状態になる。嘉風と対戦する時は、足を速くついて、僕も2つの足で残さないと、もっていかれる。出足の1歩目は気を付けていました。1歩の着地が速い。幕内で一番速いと思います」

▽阿武咲 「阿武咲の稽古を求めて、阿武松部屋に場所前しょっちゅう行っていました。負けん気の強さ、圧力。そして彼の肩甲骨の柔らかさ。普通の力士より10センチ、20センチ、腕が前に伸びてくる。もろ差しに入るうまさは、相撲界でもかなり上の方」

▽貴景勝 「腰の強さ、腰の決まり方。なかなかこういう突き押しの形っていうのは珍しい。ちょっと四つ相撲のような腰つき。しっかり相手に入り込んで、ロックして逃さない。非常に珍しい突き押し。その安定感がすごい出ている。どんどん下からあおられて入ってくるので、自分の体が起きてくる。四つ相撲で寄られているようだった」

▽高安 「彼の左四つはおそらく角界で一番強いと思います。これっていうものをしっかり決めた上で流れでいけばいい。これっていうものを決めて、しっかり当たるのが大事」。欠点として腰高を指摘されることもあるが「これが高安の相撲です。高安が頭を下げて、膝を曲げて押したら、力はないと自分は思っております。これが一番力が出る状態です」と持論を口にした。

▽遠藤 「相撲は非常にうまかったですね。ほれぼれするようなうまさ」。遠藤は栃ノ心に勝ってインタビュールームに呼ばれたが、言葉少な。この様子には「力士らしい力士ですね。アナウンサーさん泣かせ。相撲終わった後のインタビューは参考になることが多かった、結構本音が出てしまう。遠藤のようなインタビューは相手に読まれなくていいと思うけども、アナウンサー泣かせですね」。

▽鶴竜 「右足の踏み込みの速さ、地面に付く速さが横綱の強さだと思います。2つで立たれた時は、力を発揮します。1つの足より2つの足で攻めた方が強いですし、残す時も強い。僕もつく前に何とかしようということが功を奏して、対戦成績はちょっと有利だったんですけど。そこだけしか集中しなかった。そこだけでした」

▽白鵬 「強い横綱がいて、63連勝を止めて注目された。強い横綱がいて優勝したので注目されました。白鵬関がいなかったら自分はいなかったと思うくらい、そんな存在ですね。倒して横綱に上がりたいという気持ちがあったので、思い出の一番になりました」「自分十分はそうそうなれない。なれなくても引き出しが多く、勝ちにつなげる。何をするのか分からないくらい、これもあるのか、これもあるのかと毎場所感じていましたね」

兄弟子への感謝の言葉もあった。

▽西岩親方(元関脇若の里) 「若の里関がいなかったら、僕は17歳で十両に上がることはなかった。本当に稽古をつけていただいた。ここまで稽古をする力士は見たことがない。圧倒的にNO・1です。西岩親方のおかげですね」

このほか、横綱昇進時の思い出も口にした。

▽横綱 初めて綱を締めた感覚は「なんとも言葉じゃ表現できない。身震いするというか、グッと体に力がこもるようなそんな気持ちでした」。

▽失敗 推挙式の後、東京・明治神宮で初めて土俵入りを披露。「最後、ちょっと所作を間違えたんですけど…。緊張ですね。(土俵入りは)毎回、緊張していましたね」

現役時代の取り口、癖などについても言及があった。

▽最大の武器=左のおっつけ 「おっつけようと思ったことは1度もなくて、左のはずの延長がおっつけ。肘をおっつけると抜けてしまうこともありますし、無駄な動きが出てくる。すぱっと左をそのまま狙いにいくと、無駄な動きがなく、ロックがかかり、相手に力が伝わる」。この説明に対し、向正面で解説した雷親方(元小結垣添)は「横綱にあの左をしぼられると我々は何もできない。体は横を向きますし、重心もずれますから。明日、朝稽古で若い衆に使わせていただきたいと思います」。

▽癖

-控えている時、笑っているように見えた場所もあった。あれはどういう思いだったのか

「あんまり意識はなく、リラックスした気持ちでやろうとした結果があったなってしまった」

-その前は目をパチパチすることもあった

「おそらくそれをやめようと思ったのが、そういう形になったのだと思います」

放送の最後には「次に強い力士を育てることが目標」と今後を見据えて、締めくくった。