真新しい綱を締めた白鵬は、鏡の前で何度も体勢を変えていた。直後に令和最初の綱の美しいフォルムを確認してうなずいた。その後は新入幕の炎鵬を太刀持ち、前頭石浦を露払いに従え、土俵入りを披露。「できましたね。新しい年がスタートしたと強く感じた。『ヨシッ』という感じになりますね」と、身も心も引き締まった様子で話した。今回の綱は細めにつくられたといい「細く長く。人生そのもの」と今後の土俵生活となぞらえ、長く現役を続ける決意をのぞかせた。

すでに歴代最長の横綱在位は、夏場所で71場所目を迎える。12年近くも番付最高位にいても「平成で積み上げたものを思い出しながら、やっていきたい」と、土俵の意欲は衰え知らず。細めの綱に変えたのも「前は太くて腰を割る時に引っかかった」と、土俵入りへのこだわりの表れだった。

優勝した春場所千秋楽の鶴竜戦で右腕を筋断裂し、まだ相撲を取る稽古は再開していない。それでも「平成を思い出しながら令和初期を頑張りたい」ときっぱり。「平成の大横綱」だけではなく「令和の大横綱」の冠も視野に入れている。

当面の目標は令和最初の夏場所優勝だが、尊敬する元横綱千代の富士が持つ記録の更新が今後の最大の目標だ。歴代最多の42度優勝しているが、33歳からの最近1年余りは2度。ペースが落ちているが、同時期から千代の富士は8度も優勝、最後の優勝は35歳5カ月だった。「昭和の大横綱」と言われながら平成に入っても5度優勝し、存在感を放ち続けた姿があこがれであり、その記録を超えたい思いは強い。「これから何年相撲を取れるか分からないけど新しい時代も頑張りたい」。すでに多くの記録を築いた上での「細く長く」という残りの土俵人生。横綱在位をはじめ、誰も追いつけない領域に入ろうとしている。【高田文太】