新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が4場所連続の連勝発進を決めた。大関経験者の西前頭筆頭琴奨菊を懐に潜り込ませず、突き出しで退けた。

新大関が初日から連勝するのは昨年名古屋場所の栃ノ心以来、平成以降では14人目。NHK中継の解説を務めた元横綱稀勢の里の荒磯親方も絶賛する圧勝劇を見せた。場所前は新しい取り口を模索したが、同親方が成長を認める本来の突き、押し相撲を基本線に、連勝をさらに伸ばしていく。

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突いて、押して、動いて、貴景勝は相手をまわしから遠ざけた。琴奨菊に突きを下からあてがわれたが、はたいて右に回り込み、あとは猛進するだけだった。「ちょっと滑って(手が)流れた」という立ち合いから押し込めない展開。2日連続の電車道とはいかなかったが「(相手は)地力があるし技もある。自分の思い通りにいかなくても、もう1回攻めの形をつくることが大事」と振り返った。

新大関の強さに、平成最後の横綱も胸を躍らせる。この日、NHK大相撲中継の解説を務めた荒磯親方(元横綱稀勢の里)は「昔の貴景勝じゃなくなっている。(自分と)初対戦の時の映像を見たら人が全然違うんじゃないかと。腰が大きくなって、攻め方ももっと下から入ってくるようになった。1場所ごとに強くなっている」と、22歳の急成長を喜んだ。現役時代の対戦成績は貴景勝から3勝2敗。引退した1月の初場所前には二所ノ関一門の連合稽古で三番稽古を行い、荒磯親方にとっては“最後の”稽古相手なだけに、思い入れは深い。「貴景勝の安定感はすごい。新大関ですけど、まだまだ上がありますから」と、最高位に上り詰めることを期待した。

苦々しい思い出も振り返った。荒磯親方が新大関だった12年初場所、4日目で大関初黒星を喫すると、勝った相手の豊ノ島がインタビュールームに呼ばれた。「そのときは若干違和感があったけど、このようなことは絶対なくそうと思った」。当時、黒星がニュースになる地位の重みを実感。初めてを経験中の22歳の心中も推し量りつつ「貴景勝は自分の相撲を取りきればおのずと結果はついてくる」とエールを送った。

貴景勝が2日で獲得した懸賞数は断トツの70本。4月の春巡業から今場所にかけて、約1000枚の色紙に手形を押すなど、土俵内外で人気を博す。「また明日から集中するだけ。もっと強い攻め、もっと強い攻めを…。余計な雑念はつくらず、毎日やりきりたい」。連勝街道に乗っても、精神は乱れる様子がない。【佐藤礼征】