関脇栃ノ心(31=春日野)が、軍配差し違えの末の黒星に涙を流した。勝てば大関復帰が決まる一番で、朝乃山に押し込まれたが、右を差し込み、左手で相手の頭を抱え、土俵際ではたき込んだ。軍配は西に上がり、右手でガッツポーズ。ところが、もの言いがつき、自身の右かかとが先に土俵を出たと見なされた。

支度部屋では、「かかとの感触は?」と問われて「見てたでしょ?」。審判団の6分弱に及んだ協議の間も「勝ったと思ってました」と明かした。相撲内容は引いて良くなかったが、勝利の確信があったようで、涙が徐々にあふれ出し、手ぬぐいで何度も顔をぬぐった。鼻もすすり上げた。

大関復帰が決まる10勝に王手をかけてから、悪夢の3連敗。負けた際、風呂場でしばしば怒声を挙げるのだが、この日は静か。会場を去り際、ぶら下がる報道陣に「お疲れさまでした」と頭を下げた。怒りを押し殺すと言うより、ぼうぜんとしているようだった。