大相撲の前頭琴奨菊(35=佐渡ケ嶽)が2日、長野・松本市で行われた巡業で山稽古を行った。会場前の青々とした草の上で、若い衆を相手に得意の左四つ、さらには右四つなど、さまざまな形を確認。得意とは逆の左上手投げで、若い衆を緑の上に転がして気持ちよさそうに汗をぬぐっていた。

この日の松本市は、今期最高の34・7度を記録。照りつける太陽の下で、今回の巡業初の山稽古となったが「夏場こそ、外で汗をかきたくなるよね。この年齢になると、本土俵で稽古はあまりしないけど、いろいろと確認したいことはあるから」と、土俵は若手に譲りつつ、秋場所(9月8日初日、東京・両国国技館)を見据えていた。

持ち前の探求心は、衰え知らずどころか、むしろ増している。この日の山稽古も「体の使い方とか(体重の)乗せ方」と、いかに相手に力を伝えるかという、追求し続けているテーマの実践が目的だった。稽古後は「右四つもいけるかもね」と、引き出しが増えた手応えをつかんだように、満面の笑みを見せていた。

最近2場所は負け越しているが、先場所は横綱白鵬を破って金星も挙げるなど、ベテラン健在を示している。来場所は「勝ち負けはたしかに大事だけど、勝ち負けだけじゃない。自分らしさを出せるようにしたい」と、納得の取組を1番でも多く取り切ることが目標だ。

最後は、巡業に関取として初参加し、支度部屋で隣に陣取っている弟弟子の21歳琴ノ若を見ながら「(琴ノ若は)絶対に負けられない戦いがあるということを、先場所で分かったんじゃないかな。先場所は5勝7敗から、最後に3連勝して勝ち越し。1番の大切さを分かってきたら、どんどん強くなると思う」と語った。若手の成長を心から願っている様子で、ほほ笑んでいた。