大相撲の十両貴ノ富士による2度目の暴力問題判明から一夜明けた4日、双子の弟で前頭の貴源治(ともに22=千賀ノ浦)が、涙ながらに兄に反省を促したことを明かした。

都内の部屋で稽古後、報道陣に対応。昨年春場所中に続き、8月31日にも付け人の別の序二段力士に暴力を振るった兄と、2人で何度も話し合った際のやりとりも打ち明けた。貴ノ富士が謹慎休場する秋場所(8日初日、東京・両国国技館)は、罵声や批判も覚悟で臨む決意だ。

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貴源治が、貴ノ富士の2度目の暴力を知ったのは今月2日だった。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)と同様、部屋で暴力を振るった8月31日から2日後の朝、被害者力士を含む、若い衆3人の姿がないことが発端だった。「あれっと思って聞いたら、兄貴が手を出したということだった。2度目ですからね…。悲しいし、悔しいし、情けない気持ち」と、唇をかんだ。

貴ノ富士は昨年春場所中にも、当時の付け人に暴力を振るった。翌日から謹慎休場し、翌夏場所は出場停止。相撲協会はその後、昨年10月に「暴力決別宣言」を発表し、暴力行為に厳罰を科す方針を示している。

その中で2度目の暴力が判明した。貴源治は「何をやっているんだ!」と詰め寄った。すると貴ノ富士から「今まで、お前のことをガキ扱いしていたけど、お前の方がよほど大人だった。今になって身に染みて分かる」と返された。「気付くのが遅すぎる」(貴源治)。暴力判明後、何度も2人で行った話し合いでの一コマ。反省を促した貴源治も、言われた貴ノ富士も涙を流していたという。

経緯について貴ノ富士からは「軽くげんこつでゴツンとやってしまった」と説明されたという。指示通りに動かなかった、付け人の成長を促すためだと補足もされた。だが貴源治は「暴力は暴力。兄貴は、これぐらいで(問題になるのか)と思ったのでは」と、見通しの甘さを嘆いていた。

「先代が体を張って守ってくれたのに、本当に何をしているのか」。最初の暴力の際、当時師匠の元貴乃花親方が、親方衆の階級で最も低い年寄に降格した。それでも貴ノ富士に相撲界に残る道を守っただけに、貴源治は声を震わせた。

一方で「兄貴は兄貴。身内の自分が見捨てることはできない。兄弟で背負っていく」と語った。秋場所は罵声も覚悟するが、あえて「もしも(相撲界に)残ることができるなら、自分が近くで見て注意したい。ゼロからまた一緒にやりたい」と懇願。家族の絆を再確認していた。【高田文太】